コラージュ表現の可能性と丁寧なコンポジット

PEEETHさんの「不幸式」MVを、コラージュを中心としたビジュアルと、シンプルな映像構成で制作させていただきました。

僕自身、コラージュにはまだ制作の中で活かしていきたい表現の可能性を感じています。今回は楽曲に向き合いながら、その可能性を探る制作になりました。

あえてコラージュで

ボカロMVのビジュアルは当作を作った2026年時点では、まだまだイラストやアニメーションが主流です。
それ以外にも、3DCGを組み合わせたものや実写とアニメを組み合わせたものもあります。

そんな折、PEEETHさんから「島田さんのコラージュが好き」という一言をいただいたことでコラージュビジュアルでのMVを制作をさせていただく形になりました。

コラージュをまだあまり仕事で活用し尽くせていないと感じていた僕個人としてもありがたいご提案でした。

まだ活用され尽くしていないコラージュという技法

コラージュはあくまで技法の名前です。
ですが「そういう表現」としてひとくくりにされがちです。
イラストをひとくくりにできないように、コラージュもひとくくりには語れません。

「コラージュが好き」と言う方でも「こう言うコラージュが好き」とまで踏み込んで持論を言える方は実はまだ少数のように感じます。

これがイラストとなると「可愛いのが好き」「厚塗りが好き」「〇〇のような絵が好き」と各々のご意見や持論があったりします。

このことは、コラージュという技法がまだまだMVをはじめ、様々なクリエイティブで活用され尽くしていないことの表れでもあるような気がしています。

イラストもコラージュも、またそれ以外の技法にもそれぞれの良さがあるので、個人的にはコラージュのかっこよさや、作品による表現の違いがもっと多くの方に伝わると嬉しいなぁと思いながら作りました。

コラージュは素材を組み合わせるだけでは成り立たない

コラージュについて「素材を切って組み合わせているだけでしょ?」というくらいの認識で見られてしまうことは少なくありません。

ですが実際につくってみると、ただ素材を組み合わせるだけでは良いビジュアルにはなりません。それがコラージュの面白さであり奥深さだったりします。

全体を一つの絵として成り立たせる工夫や、素材それぞれの重なりや色調のバランスなどグラフィカルな作り込みを意外と細かく行う必要があるのです。

ニッチな手法と一般手法のハイブリッド

異なる二つの手法を組み合わせて不幸式のビジュアルは制作しました。
その二つの手法を簡単に解説します。

個人的には好きで主に行なってきていた、1つの素材を複製して組み合わせる「再構成コラージュ(僕の造語)」。

この手法は、25年前くらいにサイトウマコトさんという方がアナログでされていたのを知っていますが、それ以降デジタルで自分以外に同手法のコラージュを制作している方を見たことはありません。
それくらいニッチな手法です。

仕事で制作することもあれば、自主制作でもたまにつくったりとしてきました。

再構成コラージュは素材を1つに決めているからこそ、グラフィカルな部分に集中できるのが特徴です。

コラージュというよりも、幾何学的な切り絵に近い感覚の手法です。

これに対して、二つ目が一般的にコラージュと認識されている手法。
つまり、複数の異なった素材を組み合わせることで制作するものです。
僕もそうしたコラージュはいくつか制作してきています。
(ちょっとフォトマニピレーション的な作例ですけど↓)

不幸式MVを制作させていただくまでは、僕の中でこの両手法をやんわりと分けて考えていたいましたが、不幸式のビジュアルでは両手法を組み合わせることに挑戦しました。

再構成コラージュは一つの素材からあらゆるグラフィカルな表現を追求できる反面、あくまでそれはグラフィカルな表現に特化しているため意味づけを付与させにくいという側面があります。

対して、異なる素材を組み合わせるコラージュは、一つのビジュアルとして成り立たせる配慮が必要ですが、素材選択を行えるためコンセプトを土台に制作することがしやすいという柔軟性を持っています。

不幸式のビジュアルは、この両者の長所同士を組み合わせた表現ができたように個人的には感じています。

知的だけど静かに憂いを帯びている。
そんなビジュアルを目指した。

知的だけど、静かに憂いを帯びている。そんな印象を、楽曲に合うコラージュとして形にすることを目指しました。

曲を聴き込みながら素材を選び、一つ一つの意味と、組み合わせたときの全体の印象を調整しています。自分の得意な表現を使いながら、この曲のビジュアルとして成り立たせることを意識しました。

あえて素材それぞれの意味合いはここでは語りません。聞き手の方々が自由にご想像していただけたらなと思います。

コンポジットはなるべくシンプルに

コラージュのビジュアルそのものを印象に残したいと考え、映像の構成はなるべくシンプルにまとめました。

カット数を増やすよりも、一つの画面をじっくり見られることを大切にしています。ビジュアルと歌詞がどう目に入るか、そのバランスに意識を向けました。

演出ではなく組みを丁寧に

当作のMVの文字組みは、個人的には自分特有の組み方だと思っているやり方です。
僕がこの組み方をし始めたのが2021年頃で、その当時はまだこの組み方をしている作品は見たことがありませんでした。
今僕以外にもいらっしゃるかもしれませんね。

今作の歌詞の文字組みには、僕が以前から取り組んできた組み方を用いています。

派手な演出を加えるよりも、文字の配置や画面全体の骨組みを丁寧に整えることを重視しました。コラージュと文字組みの両方から、自分らしい表現を楽曲に添えられたと感じています。


※本稿は公開されている完成作品をもとにした制作者個人の振り返りです。関係者の公式な作品解説を示すものではありません。

※万が一不適切な表現がありましたら修正いたしますので関係者様に限りご連絡をお願いいたします。

連絡先:shima◎delyze.com(◎を@に変更)

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